🎙️Voices #3 — マヤ・ペルソーさん:ファッションがインパクトになるとき
- GWF FRANCE

- 2025年12月31日
- 読了時間: 4分
更新日:7 日前
マヤ・ペルソーさん、ESPERO France 共同創設者/ディレクター
マヤ・ペルソーさんは、アメリカ・テキサス州オースティン生まれ。ハワイ(オアフ島)で育ち、現在はパリを拠点にしています。パリに来たきかっけはモデルでした。ご本人は、その時代を「夢の仕事」とは語りません。偶然開いた扉を、好奇心と覚悟でくぐった。そう語っています。
パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨーク。ショーのシルエット、キャスティング、契約。ファッションの現場を駆け抜けながらも、彼女がその時代から持ち帰ったものは、きらびやかさではありませんでした。
残ったのは、身体に染み込むような規律、そしてもうひとつ。幼い頃から自然に身についていた、とてもシンプルな考えです。「自分が多く持っているなら、誰かに返す」。

彼女の芯にあるのは、華やかさではなくフェアネスです。ファッションの世界で生きたからこそ、逆に“何を残したいか”がはっきりしていったのかもしれません。
その問いを言葉にするために、Mayaさんは学びを深めます。SOAS(ロンドン大学)で「開発社会人類学」を専攻。以来、彼女の中に残り続けているのはシンプルで鋭い疑問です。「“開発”は、尊厳や安定、そして本当の自立につながらないなら、何の意味があるのでしょうか?」
パリのアトリエが向き合うのは、「技術」だけではありません
2016年に設立されたESPERO Franceは、移民・難民の方々の社会復帰と就労を支える団体です。縫製(アップサイクル)に加え、パーマカルチャーや都市農業など、環境への移行と雇用を結びつける複数の現場を持っています。
ただ、ESPEROの本質は「技術を教えること」そのものではありません。
Mayaさんが繰り返し口にするのが、blockages(ブロッケージ)「見えない壁」という言葉です。書類手続き、言語、孤立、トラウマ、自信の喪失。能力があっても、生活の側にある事情が就労を阻む。ESPEROはそこに焦点を当てます。
手を動かす訓練と同時に、働くための土台を整える。つまり、技術と生活を切り離さないのです。
オルセー美術館で発表されたコレクション
2025年7月、ESPEROはオルセー美術館でコレクションを発表しました。デザイナーのJoy Acevedoさんとともに制作され、担ったのはESPEROの職人チーム。素材にはリサイクルやデッドストックが用いられ、一部はラグジュアリーメゾン由来のものも含まれていました。
注目すべきは、これは単なる「場所としての美術館」ではなかったことです。美術館の職人たち自身がユニークピースの制作に加わり、技術と時間を共有しました。支援と被支援という関係ではなく、同じ“つくり手”として交わる。そこで生まれたのは、作品だけではなく、一緒にプロジェクトを分かち合うこと。
すべては小さく始まりました。数箱の蜂箱から。
意外かもしれませんが、ESPEROの出発点は縫製ではありません。最初は養蜂と都市農業でした。蜂箱はほんの数個。Mayaさん自身、養蜂の知識はゼロからだったといいます。それでも始めた。「準備が整ったら」ではなく、「始めてから整えていく」。その姿勢が、ここまでの道のりをつくりました。
プロジェクトが育ち、そこから生計を立てる人も現れました。迷いが差したときに彼女が立ち戻るのは、こうした“生活が変わった事実”です。理念ではなく、現実。だから続けられるのだと。
縫製への転換は、現場の「手応え」から
縫製へのシフトも、最初から計画されていたわけではありません。滞在施設を訪ね、話を聞くなかで、彼女は縫製が持つ力に気づきます。どこへ行っても持ち運べるスキルであり、手元から未来を組み立てられる技術。必要なのは、芽を見つけたら形にすることでした。仲間を集め、支援を得て、少しずつ育てていく。小さく始め、自然に広げ、現実が次の方向を教えてくれる。マヤさんのやり方は一貫しています。
いまの優先順位は「持続すること」。次の章はブラジルへ
いまマヤさんが向き合っているのは、持続性です。学んだ女性たちが、その技術で本当に暮らしていけること。ミッションを守りながら、経済モデルを強くすること。パートナーシップやプロダクトも含め、「続く仕組み」を整えています。
そして次の章として、ブラジルへの移住も視野に入れています。子ども、とりわけストリートチルドレンを中心としたプロジェクトを、まず観察から始め、学び、現地で小さく立ち上げていく。いつものように、急がず、でも止まらずに。
最後に、マヤさんの言葉はとてもシンプルです。
完璧な選択を探して立ち止まるより、まず動くこと。
動く。
決める。
小さく始める。
学びながら調整する。
水のように、流れ続けること。



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